井戸
現在,農村部では雨水を飲料水として利用しているが,十分な降雨がない地域では,乾季には井戸水を飲料水としている. 井戸にはおおむね2つの種類がある.一つは機械掘りの深さ10m前後かそれ以上の比較的深い井戸,これはボーバダーンとよばれる.そして単にボーと呼ばれる人力掘りの浅い井戸である.飲料水として用いられるのは,主に後者の浅井戸の方で,深井戸の多くは生活用水となっている.深井戸の水は,酸性度が高いか何かで,水質に問題があることが多いためである. |
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![]() 共同井戸まで水汲みに行く子供 スリン県S郡 2001年5月 |
■深井戸
深井戸は専門の業者によって掘られる.業者は『井戸掘り』【jobbadan】という看板を掲げており,たいがい上総掘り車が近くに停まっているのでそれとわかる.料金は1999年に調べたところでは1,400バーツ.今はもうちょっとするであろう.
各戸が掘っているような村もあれば,政府の掘った井戸を全村民で共同利用しているような村もある.スリン県のT川流域でざっと見たところでは,川下ほど,各戸が井戸を掘っている村が多いように思う.
□県土地改良事務所
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ポンプ | 事業標 |
□工業省地下資源局
![]() <傍らの看板の図に基づいて筆者再作図> | |
手動ながら,ろ過装置などが ついている. |
水を利用する際 1番 2番の蛇口を開け 3番 4番の蛇口を閉める. ろ過タンクを洗浄する際 などと書かれていたが,さびていて良く読み取れなかった. |
■浅井戸
浅井戸は川のほんのすぐ傍に掘られるものと,川から数km離れた場所に掘られるものとがある.
井戸を掘る場所は寒期に探し当てる.寒い日にうろつきまわると,そこだけ周囲より少し暖かい場所があり,そこを掘ると水が出るというのである.人工衛星の赤外線画像なんかが井戸掘りに役立つかもしれない.
川の傍に掘られるものは,本当に川の流れのすぐ傍,数メートルのところに掘られている.大きな土の粒子は濾過されるのであろうが,河川に農薬や化学肥料が流れ込んでいたらやばいんじゃなかろうか.
川沿いに井戸が掘られている場合,井戸の近くに堰が建設されていることが非常に多い.東北タイの河川は,乾季には上流からの供給がなくなるので,堰き止めておかないと完全に干上がってしまうのである.
水質は一般に,じっくり時間をかけて水が滲み出てくるような井戸の方が良く,早く湧き出してくるような井戸の水は飲めないことが多いという.水質の良い井戸水が得られるような村には「ナムサイ」【nam sai】(澄んだ水)という村名がついていることもある.また,同じ井戸の水でも,非常に味が良いときと,泥臭いときがある.
河川のそば小さな穴を掘ると,水がでる.
わずかに白濁しているが,無味無臭. |