Prasat Phumpon
prasat_phumpon

プンポーン遺跡の塔[prasat].両脇の塔は土台を残して崩れ落ちてしまっている.

 Prasat Phumpon遺跡は,タイ国内最古のクメール遺跡,アンコール朝以前,7-8世紀の建築という触れ込みである.あまり修復もされていないようで,もともと建築物自体はあまり大きくなかった上に,長年にわたる風化によって崩壊が進み,崩れかけた煉瓦造りの塔一棟の他は,土台などが残っているのみである.ある専門家によると,南側(向かって左)の塔(今はない)は,中央の塔より後になって建てられたものであるという.レリーフはスリンに新しくできた博物館に収蔵されている(もとはピマーイの博物館にあった).土台はラテライトで本体はレンガ.クメール遺跡の塔の材質・形状は時代とともに変化しており,煉瓦造りで,かつ四隅に装飾が施していない(角を段々に刻んでいない)ものが古い時代のものであるそうだ.

 建物自体よりも興味を引くのは,この遺跡の周辺に構築された水利網である.煉瓦造りの塔の周囲には環濠が巡らされ,塔の裏には「サ=プレイ"sra phlei"」(「プレイ」はクメール語で「密林」の意)と呼ばれる長方形の大きな人工池(バライ)がある.かつて,環濠やバライの水は,1kmほど北を流れる川から供給されていたという話で,川から塔に向けて築かれた一直線の土手が現在も残っているが,あちらこちらが決壊してしまっており,機能していない.もっとも,機能しなくなってからかなりの年月が流れており,機能している様子を見た者がいるわけでも,伝え聞いた者がいるわけでもない.

kono_dote_ha_nanjai 谷間を一直線に横切る土手.信仰のためか,灌漑のためか...

 遺跡の周囲からはいろいろな遺物が見つかっており,これらは近くの寺(ワット=テープ=ウドム)やドム村(Ban Dom)の小学校の一室に収蔵されている.寺に収蔵されている石像は,特に公開されているわけではないが,僧侶に頼むと見せてもらえる.小学校に展示されているものは,この学校の先生であり,郷土史家・郷土文化(特にクメール)研究家であるトンルアン(thongluang)先生が集めた品々で,甕や陶磁器,石の彫刻など,個人が集めたとは思えない幅広い内容である.畑仕事中に農民が掘り当てたり,村人が拾ってきて日常生活に使っていたものを譲り受けてきたもの.遺跡(特にレリーフ)に用いられていた砂岩は,村人が良く刃物研ぎに用いているという.


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